天照大御神はなぜ伊勢に鎮まるのか――伊勢神宮・内宮を訪ねて

三重県伊勢市、五十鈴川のほとりに鎮まる皇大神宮(内宮)。ここには、皇室の御祖神とされる太陽の女神・天照大御神がまつられています。天岩戸に隠れて世界が闇に包まれたという神話で知られる神ですが、本記事では別の問いを立てます。なぜこの神は、古の都から遠く離れたこの森でまつられることになったのでしょうか。

Uji Bridge at Ise Jingu Naiku
“Ise Shrine Uji-bashi1” (Uji Bridge, Ise Jingu Naiku) by Yanajin33, CC BY-SA 3.0, source, via Wikimedia Commons

伝承: 倭姫命の旅

伝承: 『日本書紀』が伝えること

『日本書紀』(720年)によれば、天照大御神の御霊代とされる鏡は、もとは宮中でまつられていたとされます。崇神天皇の代に宮の外へ遷され、豊鍬入姫命に託されたと伝えられます。続く垂仁天皇の代には皇女・倭姫命がその役を引き継ぎ、大神が鎮まるにふさわしい地を求めて旅立ちました。神宮の由緒によれば、倭姫命は大和の国をはじめ伊賀、近江、美濃の諸国を巡った後、伊勢の国の度会の地、宇治の五十鈴の川上に至ったとされます(後世の伝承では尾張などを経たともいわれます)。

そのとき大神は、伊勢は常世の浪が寄せる国、傍国の美しい国であり、この国に居りたいと告げたと書紀は伝えます。こうして五十鈴川のほとりに宮が建てられたとされます。これらは伝承・史書の記述であり、年代をそのまま史実とみなすことはできず、伊勢での祭祀の実際の起源は研究者の間でも議論があります。また巡幸の途中で一時的に大神をまつったと伝わる地は「元伊勢」と呼ばれ、各地にその言い伝えが残ります。

伝承: 八咫鏡

内宮の御神体は、三種の神器の一つである八咫鏡であると伝えられています。神話では鏡は天照大御神と結びつけられ、神代から受け継がれたものとされます。鏡は一般に公開されることはなく、実際の形状や年代を確かめることはできません。事実として言えるのは、神宮が内宮を天照大御神をまつる宮と案内していることであり、鏡が奉安されているという点は、検証できる事柄ではなく長く守られてきた伝承です。

Isuzu River seen from Uji Bridge, Ise
“Isuzu River from Uji bridge – Feb 10, 2020” (Isuzu River, Ise) by Ik T, CC BY 2.0, source, via Wikimedia Commons

事実: 20年ごとの建て替え(式年遷宮)

事実: 記録が示すもの

神宮では約20年に一度、内宮・外宮の正殿をはじめ多くの社殿や御装束神宝を隣接する敷地に新しく造り替え、大神に新宮へお遷りいただきます。これが式年遷宮です。神宮によれば、この祭りは約1300年にわたって続けられており、神宮は第1回を持統天皇4年(690年)としています。第62回は2013年に行われ、神宮公式サイトは第63回神宮式年遷宮が令和7年(2025年)から8年余りをかけて行われると案内しています。

このため境内には、現在の正殿の敷地と、次の正殿が建つ空き地(古殿地)が並んでいます。なぜ20年なのかは古い記録に説明がなく、「技術を次世代へ継承するため」「常に瑞々しさを保つため」といった説明は後世の解釈であり、定説ではない点に注意が必要です。

事実: 宇治橋

内宮の参道は、五十鈴川に架かる全長101.8メートルの木造の宇治橋から始まり、両端には大きな鳥居が立ちます。宇治橋は日常の世界と神域を結ぶ境とされています。橋も遷宮の周期に合わせて架け替えられ、神宮によれば、内側の鳥居には内宮の旧正殿の棟持柱が、外側の鳥居には外宮の旧正殿の棟持柱が用いられています。伊勢市観光協会によれば、冬至の頃には宇治橋の鳥居の中から昇る朝日を見ることができます。

The Uji-bashi bridge in front of Kotai Jingu (Naiku)
“Uji-bashi 01” (Uji Bridge in front of Kotai Jingu) by N yotarou, CC BY 2.5, source, via Wikimedia Commons

事実: 内宮を訪ねる

事実: 五十鈴川の御手洗場と参拝の作法

境内には手水舎のほか、石段を下りて五十鈴川の流れで直接手を清められる御手洗場があります。神宮は、手や口を洗い清めることは禊を簡略化した儀式であると説明しています。参拝作法は二拝二拍手一拝。公式サイトでは、内宮は右側通行(外宮は左側通行)、神域内での喫煙・飲食の自粛、ペット同伴不可などをお願いしています。神域内では御正宮周辺など撮影禁止の場所があり、撮影には制限がありますので、現地の案内や係員の指示に従ってください。

事実: 内宮と外宮

神宮は一つの神社ではなく、内宮・外宮を中心とする125の宮社の総称です。内宮が天照大御神をまつるのに対し、約4〜5km離れた外宮(豊受大神宮、バス・タクシーで約10〜20分)には、天照大御神のお食事をつかさどる豊受大御神がまつられています。神宮によれば特に決まりはありませんが、外宮から内宮の順にお参りするのが昔からのならわしです。入場料は無料です(伊勢市観光協会より)。

参拝時間(内宮・外宮・別宮、神宮公式サイトより):1〜4月・9月 午前5時〜午後6時、5〜8月 午前5時〜午後7時、10〜12月 午前5時〜午後5時。お正月中は時間が変更されます。アクセス:伊勢市駅・宇治山田駅から「内宮前」行きのバスで約20分(伊勢市観光協会より)。時間や路線は変わることがあるため、お出かけ前に公式サイトをご確認ください。

Locator map of Japan: Ise, Mie
Legend site: Ise, Mie — Source: Map of Japan with highlight on 24 Mie prefecture.svg; Map: Lincun, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

Sources

執筆者

JAPAN ESSENCE 編集部
日本各地の伝説や神話、祭り、受け継がれてきた文化を、史実と言い伝えを皆様にお届けするのを使命としています。

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